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]]]和輝くんと亮五ちゃん(エマ編)[[[

 プレイ中になんとなく思い浮かんだ小ネタ。
 本編とはほとんど関係ない上に無駄にネタバレです。
最終ネタ追加:4/Mar/2004


 @沖縄海洋都市

 和輝は小池に訊ねた。

「この機体は突撃型だ。日防軍にはこんなタイプが必要なんですか」

「ひょっとしたら戦争でも起こそうってんじゃねえの?」

 聞き覚えのある声に振り向くと、そこには親友の亮五の姿があった。

「何でお前がここにいるんだよ!」和輝は叫んだ。「わかったぞ、あのくそ親父だな。あんにゃろ戦争おっぱじめるためにお前に新型ヴァンツァーをもってこいって命令したんだな。判ってたんだ!さあ亮五、そこへ直れ、成敗してくれる!」

「あーあ始まったぞホラ小池さん麻酔銃麻酔銃」

 暴れ始めた和輝を取り押さえながら、亮五はひとりごちた。

「何でお前は物事に区別をつけられないかなあ」


 @横須賀バー

「私はエミール・クラムスコイ、エマでいいわ」

 ブロンドの女性はほのかに笑う。

「俺は武村和樹。こいつは草間亮五、俺のタケウマの友です」

「タケウマの?」エマが首を傾げた。

「一緒に竹馬で殴り合いをするほど親しいって意味ですよ、日本語で」和輝が明るく答える。

「…『竹馬の友』なら知ってるけど」

「?」

 返事を待つエマの耳に、亮五がそっと囁いた。

「あのね、ウソ教えたの、オレ。こいつすぐ信じるから面白くてさ」


 @シンガポール

「軍事機密ねえ。6000だな。経費はサービスしとくわ」

 さらりとふっかけるマネーメーカーに、和輝は淡々と答えた。「いいだろう」

「おい、どうやって払うんだよ」亮五が不安そうに訊ねる。

「エマかデニスが払う」

「…おめーなあ、やっぱし坊ちゃん体質変わってないな」

「私?私はそんなお金持ってないわよ」エマが顔色を変えないのは相変わらずだ。「給料の八割は国債購入に回してるの」

「持ってんじゃねーかよ」

「デニスが払ってくれると思うわ」

「な、なぜ私が!」一瞬鼻息を荒げたデニスだったが、和輝の純真な視線とエマの醒めた視線の挟み撃ちにあってあっさり降参した。「わかった、今回はFAIにつけてやる」

「交渉成立!」まだ少女のあどけなさを残したスペンダーが席を立つ。「じゃ、あした取りに来て」

「ちょっと待て」

「何よ!」

「領収書もらえるかな」

「わかったわかった、書いとくから」

「宛名は上様じゃだめなんだ。FAIアジア特別工作部極東科政府転覆係 デニス・ヴァイカートで頼む」

「はいはい」

「ちゃんとメモに取ってくれ」

「あんたと違って若いんだから忘れたりしないわよ」

「それから内容は『日防軍極秘情報違法ダウンロード代金として』とちゃんと書いておいてくれ。それから、それから…」

 マネーメーカーはその後30分足止めを食らい、おかげで警察に通報されたという噂である。


 @タール基地

「パイロットだ。まだ生きてるぜ!」

 亮五の声に、和輝は慌てて瓦礫と化した陣陽の影にカメラを向けた。「おい、大丈夫か?」

「…殺せ」パイロットは低い声で呟いた。「もう私には生きている価値はない。殺せ」

「何を言うんだ!」

 和輝が叫んでいる間に、デニスはゆっくりと男に近づいた。

 ぷちっ。

「仕事なのでな」

 近くのコンテナにレッグの裏をこすりつけて汚れを落とすデニスを、和輝は唖然として眺めていた。


 @龍勝

「遅かったか!」

 数軒の家は既に焼け落ち、黒ずんだ煙が空に流れている。だが建物の影に動く機体を、デニスは見逃さなかった。

「いや、まだ戦っているヴァンツァーがいるぞ」

 和輝はセンサーをデニスが示す方向に向ける。

「待てよ、デニス。戦っている二機のヴァンツァーを見てみろよ」

「一つは見たこともない機体だな」

「知らないなら知らないって言えばぁ?」

「ユンは黙ってくれ。もう一つは快速反応部隊か!?」

「仲間割れか?」

「あん?でもあれ、『快』って書いてねーじゃん」亮五がめざとくチェックを入れる。

「ほんとだー。きっとパチモンだよ」

「そ、そういうもんなのか?」

「カズキみたいなおぼっちゃまには一生わかんないでしょーけどっ」ユンが妙に自信ありげに宣言する。「ヤフオクでヴィトンのパチモン売りさばいて一財産つくったこのユン様の目はごまかせませんよーだ」

 和輝が黙り込む。

「じゃ、ありゃきっとパチモンメーカーの取り締まりだな」亮五が結論づける。「オレ達が首をつっこむ問題じゃないや、てっしゅーてっしゅー」

「亮五、てっしゅうってなんだ」

「ポケモンの一種だよ。さ、帰るぞ和輝」

 一行は相変わらず派手に煙を上げる村を後にした。

「で、ユン、お前稼いだ金は何に使ったんだ」

「本物のヴィトン買ったに決まってんじゃない。乙女心がわかんない奴ってやだね〜」

 そのセリフを聞いたデニスは懐からFAI手帳を取り出すと、裏表紙の余白に小さく「ヴィトンのバッグ。シビル用」と書き込んだ。


 @玉屏

「昔はすごく綺麗だったんだと思うわ」

「ユン、おめーには似合わねーセリフだな」

「悪かったわねッ!」

「いやー子供達は元気で良いことだガハハハ」

「なによマーカス、こんど隠れてあんたのヴァンツァーのネジ一本抜いちゃうから覚悟しなさいよ」

「いやー甘いなお嬢さん、ネジや腕の一本二本なくて困る未熟者じゃないぞガハハハ」

「やっぱし筋肉バカ」

 わあわあきゃあきゃあやっている彼らの正面、橋桁の影からエビ茶色のヴァンツァーが2機姿を現した。

「いやーこれでも少しぐらいは脳味噌があるんだぞお嬢さんガハハハ」

「ヘッドバットの重石用でしょどうせ」

「いやー子供は言うことが面白いなガハハハ」

「子供じゃないわよッ!」

「私はルドルフ!」

「はいはいおこちゃまは先生の言うこと聞こうね〜」

「あたしは学生じゃないから関係ないの。亮五こそ学生の分際でプロのスペンダーに偉そうな口きかないで!」

「私はレベッカ!」

「プロプロって単に金の亡者じゃんおめーの場合」

「あんたなんかバイトでヴァンツァーに乗って殴られてナンボでしょ。ユンはこれでも頭脳労働だもん。時間単価が一桁違うのよ!」

「我々は呉龍傭兵団!」

「亮五、時間単価って何だ」

「57577の詩だよ、そんなこともしらねーのか和輝」

「悪かったな」

「つまりあたしのほうが稼ぎがいいってこと!」

「いやーそんなことを自慢する辺りが初々しいなガハハハ」

「そういうマーカスは幾ら稼いでんのよ」

 ガツン。

「いやー道の邪魔になってるぞどいてくれガハハハ」

「話逸らすんじゃないよ」

「ユン、前をよく見て」

「うっわー、趣味悪い色!」

「…われわれを知らないとは、傭兵が聞いてあきれるな」

「なあデニス、傭兵って誰だ?」

「我々の事を言っているのではないかと思うが」

「すっげー、オレたち傭兵だってよ、かっこいーじゃん!」

「だったら少しは真面目に仕事しろ亮五」

「フッお嬢さん、オレみたいな傭兵に惚れちゃいけないぜ…なんてな」

「かっこわるーい。ホセが言うなら結構似合いそうだけど」

「なんだよそれは」

「だって亮五に惚れるほど女はバカじゃないもんね」

「じゃあホセ言ってみてくれ」

「…」

「貴様らの首には賞金がかかっているのでな」

「オレ達賞金首だって!かっこいーじゃん」

「ユンの貯金のために売られてくれる亮五ならすごくかっこいいよ」

「二度としないって約束しただろう」

「まったく和輝は冗談もわかんないんだから」

「貴様ら少しは敵に注意をはらわんかい!」

 ルドルフが放ったライフルの弾丸を、エマはあっさりと盾ではたき落とした。

「うるさいオジンってサイテー」

 ユンがむくれてルドルフをどつく。

 ボディブレイクだった。


 @廈門

「みんな、聞いてくれ」リーは低い声で切り出した。「じつはあの飛行機事故…私の部隊が撃墜したんだ」

「何ッ!副議長を暗殺するために快速反応部隊が飛行機を墜落させたのか!」

「和輝、声でけーよ。聞こえてる」

 亮五にたしなめられて、和輝は慌てて声を潜めた。

「亮五、撃墜って何だ」

「背骨のことだろ」

「いやー青島ビールもう一本たのむぞガハハハ」

 他の客が殺気をあらわにして自分を取り囲むのを感じながら、リーは静かに続けた。

「そうだ」

 料理長のフライパンを身体をひねって避ける。

「あのころ私は」肘うち「任務を遂行する」回し蹴り「ことだけを」巴投げ「考えていた」卍固め「それが」ジャブ「国のためだと」ニードロップ「思っていたからだ」ジャーマンスープレックス。

「いやー坊やビールはこっちだぞガハハハ」

「…あなたは勇敢な人だ」コーワンが呟く。「言わなければ誰にもわからなかったのに」

「勇敢ってゆうかぁ、ただのバカ?」

 ユンは積み上げられた死体を横目に、皿に残っていた最後の海老を口に放り込んだ。


 @広州

「…なあ、和輝よお」

 亮五が耳打ちした。

「なんだよ、気の抜けた声出して」

「そろそろ日本食が食いたくなってこねえか」

「相変わらず緊張感がないな」

「まあな。食う寝る遊ぶの亮五様だかんな」

「なんだ、お前達日本食が懐かしいのか」聞き耳を立てていたのか、デニスが割って入った。「広州一の日本料理屋なら知っているから、連れて行ってやろうか」

「なに!?ホントかデニス!」

「うむ」デニスは自信ありげに答えた。「あそこならカリフォルニアロールはもちろんスモークサーモンのにぎり寿司にウナギの躍り食い、フォーチュンクッキーまでなんでも食べられるぞ」

「…やっぱやめとくわ」

「なんなら私が奢ってやってもいいんだぞ。ちょうどでんでん虫のみそ汁でも飲みたくなってきたのでな」

「…マジでやめ」

「亮五、でんでん虫ってなんだ」

「ぺんぺん草みたいなもんだろ」

「そうか。うまそうだな」

「オレは好みじゃないんで遠慮するわ」

「えーなんでー?」ユンは奢るという言葉を聞き逃さなかったらしい。「いいじゃんいこうよ、ユンはウナギの躍り食いためしてみたいな」

 亮五は聞こえない振りで和輝の肩を叩いてその場を立ち去った。

ウナギのぬるぬるはイクシオトキシンという猛毒です。
よい子は生で食べないようにしましょう。


 @上海新空港

「俺たちは無駄な戦いをするつもりはない」和輝は叫んだ。「頼むから邪魔をしないでくれ!」

「そういうわけにはいかん。あんなバカ共でも仲間だったんだ」

「あんたも人のことは言えないと思うけど〜」

「そうそう、おっさんあたりいい加減もうろくしてんじゃないの?」

「亮五も人のこと言えないよ」

「お互い様だなガハハハ」

「マーカスもだけど」

「敵討ちぐらいはしてやらないとね」

「敵討ちって言われても〜、あれは墓穴ってゆーの?」

「亮五、ぼけつってなんだ」

「水運ぶ入れもんだよ」

「それはバケツではないだろうか」

「無粋な奴だな、デニス」

「デニスは無粋なのか」

「てゆーかまだ気づいてなかったの〜?和輝鈍すぎ」

「貴様も敵に気づけこの小娘!」

「小娘じゃない!」

「あー、ユン、またマジになってんのな」

「かわいげがあっていいじゃないかガハハハ」

「……プ」

「ホセ、和んでる場合じゃないわ」

「ここはこの私に任せたまえ」

「それさんせ〜。リニーならセンス悪い所いい勝負だし〜」

「こ、この私に対してなんと失礼な!」

「だいたいあんたたち敵無視して失礼だと思わないの?!」

「亮五、敵って誰だ」

「あのおっさんとおばさんだろ」

「おばさん!ちょっとルドルフ、あいつ私のことおばさんだなんて!」

「落ち着けレベッカ!」

「何よ!ルドルフ、あんたは確かにおっさんだけど…」

「おう、それはお前でも聞き捨てならないぞ」

「おっさんはおっさんだろ!いい年なんだから」

「なんだ俺はおっさんなのにお前はおばさんじゃないのか?」

 言い争いを始めた二機を残して、一行は空港駅を後にした。


 @沖縄海洋都市リターンズ

「お前にはまだ利用価値がある」

「ルカーヴさんってひょっとしてむっつりスケベなんですか」

「馬鹿なことを言うな。私がお前を握っている限り、奴は必ず来る」ルカーヴは自信たっぷりにそう言った。「アリシアーナ、奴がお前を見殺しにできるはずがない。なぜならあいつは、重度のシスコンだからだ!」

「誰がシスコンだと!」

「!!速すぎるわお前は!」いきなり目の前に現れた和輝に、ルカーヴは食ってかかった。

「ルカーヴ、お前の好きにはさせない!」ショットガンを掲げて和輝が叫ぶ。「シスコンだなんて…おい亮五、シスコンって何だ」

「お前、本当になにもしらねえからなあ」亮五が器用にヴァンツァーで肩をすくめる。ただ者とは思えないパイロットぶりである。「シスコンってのはシステムコンパチブルの略だろ」

「何ッ!」

 和輝がいきり立つのをみて、ルカーヴはほくそ笑んだ。

「ルカーヴ、貴様!」和輝の声は怒りに満ちていた。「貴様、いつの間に俺を改造したんだ!全然気がつかなかっただろうが」

「しとらんわダアホ!」

 和輝はルカーヴに本気でつっこみをいれさせた最初の男だった。



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