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]]]和輝くんと亮五ちゃん(アリサ編)[[[

 プレイ中になんとなく思い浮かんだ小ネタ。
 本編とはほとんど関係ない上に無駄にネタバレです。
最終ネタ追加:4/Mar/2004


 @横須賀基地

「アリサ!」

 和輝は不器用にこちらに向かってくる建築用ヴァンツァーに向かって叫んだ。

「ヴァンツァーがアリサに見えるなんておまえ欲求不満ためすぎじゃないの?」

「違う!アリサが乗ってるんだ!」

「じゃ、そういうことにしとくから」

 亮五に襟首を掴んで引きずられながらも、和輝は必死で作業用ヴァンツァーに向かって手を振った。

「おーい、アリサ、こっちだ!」

「お兄ちゃん!?」

 スピーカかなにかから、基地中に届きそうなほどばかでかい声が響く。

 亮五が慌てて両手で耳を押さえたために自由になった和輝は、アリサの方に数歩駆け寄った。

 と、彼らの間に開いていた穴から何かがせり上がってきた。

「おい、USNだぜ!」亮五が耳を押さえたままで叫ぶ。

「やべえ、見つかっちまったぞイェイ♪」

「ちょっとあなたたち」アリサは作業用ヴァンツァーでUSN軍の前に立ちはだかった。「ここがどこだと思ってるんですか?潜入するのならちゃんと外装ぐらい塗り替えてきてください。だいたいそのヴァンツァー、USN産じゃないですか。こんな目立つ物は無理して持ち込んだりしないで現地調達するのがセオリーでしょう。そんないい加減な神経で破壊活動なんかやったら、そのうち亮五くんみたいになっちゃいますよ」

 口調は冷静だがボリュームは最大である。

 耳キーン状態でふらふらしているUSNのヴァンツァーを後目に、アリサは和輝の方にやってきた。

「おにいちゃんもああいう人たちみたいになっちゃだめよ。じゃ、帰りましょう」

「あのさー、俺は俺は?」

 のんびり歩いて基地を去る三人が脇を通り過ぎたトレイラーの中で、リュウ・ハイフォンもまた耳キーン状態で床に突っ伏していた。


 @火力発電所

「手間を取らせおって」

 いかにも疑ってくださいといわんばかりの黒塗りのヴァンツァーが、彼らの前に立ちふさがる。

「おとなしく科学者を渡せ。言うことを聞けば命の保証はしてやる」

「でもあの研究所、すっごく労働条件悪いんですよね。私あそこに戻りたくないです」アリサはミサイルを装填しながら言った。「もし戻るんだったら、やっぱり時給は最低今の倍もらわないとあわないかな。ちゃんと保険もいいやつが必要ですし。あと私まだ教養課程なので、週の労働時間は最高でも十時間程度にしてくださいね。テスト期間はもちろん休暇もらいます。それから…」

「…お前達にはここで死んでもらう」

 そう宣告した黒井が後でさんざんやっかんでいたとは、部下の言葉である。


 @ダバオ

 メールを読んでいた美穂が「あらぁ」とかなんとか暢気な声を上げる。

「どうしたんですか、美穂さん」

「メールなんですけどぉ」

 アリサは肩越しに画面を覗き込んだ。「交通安全の講座ですか?」

「そうなんですよぉ。写真送ってきてくれたみたいで」

 美穂が添付書類を開くと、それは犬の着ぐるみを着ている美穂の写真だった。

「美穂さん、こう言うの似合いますね」

「そうですかぁ、照れちゃいますねえ」

 言いながら二つ目の添付書類を開いた美穂は、慌ててそれを閉じて電源を切った。

「どうしたんですか?」

「あははは、なんでもありませんよぉ。ちょっと顔洗ってきますう」

 そそくさと部屋を出ていく美穂を、アリサは不思議そうに見送った。

「きっと、他の仕事はさせてもらえなかったんだろう」和輝が呟く。

「他の仕事…」

 まさか2枚目の写真に「2ねん3くみ くろいゆうじ」と書かれた裸エプロンの中年男性が映っていたことなど、とても口に出来ないアリサだった。


 @哮天雷関

 廊下の真ん中で不意に立ち止まったリュウに、和輝が訊ねた。

「どうした、リュウ」

「イマジナリーナンバーか……」

 立っていたのは透き通るようなブロンドに青い目をした無表情な男である。男は胸元からハンカチを取り出し、リュウの肩に落ちていたフケを払ってから言った。

「MIDASの奪取に失敗したようだな」

「お前たちには関係ない」

 男はそう答えて右のポケットからハサミを取り出し、亮五の枝毛を一本切り落とした。「いや」と言いつつアリサの背後に回り込み、解けかけたリボンを結び直す。「貴様の失敗でルカーヴ様の計画に狂いが生じる可能性がある。もう少し赤みがかった色の方が似合うな」

「そうですか、すみません」

 思わず謝るアリサの事など気にも留めていない。

「作戦に変更はない。すでに別の手を打っている」

 リュウが応じる傍らで男は尻ポケットから裁縫セットを取り出し、今にも取れてしまいそうな和輝の袖口のボタンをきちんと縫いつけた。「ミシン糸を使うとは愚かにもほどがある」

「……それよりルカーヴの方は大丈夫なんだろうな」

「心配はないな」男は今度は美穂の顔をまじまじと眺めていたが、やがて内ポケットからアイブロウライナーを取り出して美穂の眉を書き足した。「あの方に失敗などありえない」何本かのコンシーラーの中から一本を選び、目元の隈を塗りつぶす。「睡眠不足は肌の大敵だ」

「だといいがな……なんの話だそれは」

 リュウの言葉を無視した男が自分の前に立つと、ファムはややむっとしたように睨みつけた。男はズボンのポケットからセーム皮を取り出して彼女のイヤリングを手早く磨き上げた。

「リアルナンバーなど所詮この程度か」

 軽蔑したように呟きながら手の中のものを一つ一つポケットに戻し、男は一向に最後の一瞥をくれて立ち去った。それを見送るリュウは沈黙している。

「なあ、イマジナリーとかリアルってなんだ?何かの暗号か?」和輝が訊ねる。

「みなさん、リュウさんのことをリアルナンバーって呼んでましたよね」

「で、あのグリース臭い連中はイマジナリーなんちゃらっていうんだろ」

 臭いほどグリースで髪を固めているのはジオールだけだ、という言葉を、リュウは面倒になって飲み込んだ。


 @名古屋下水道

「あれ、美穂ちゃんなにやってんの?」

「こういう情報も何かの役に立つこともあるかと思いましてえ」

 殊勝なことを言いつつ美穂が見ている画面がこれであることに気づき、メイヤーは言った。

「…あんまり見習わない方がいいわよ。手遅れかも知れないけど」



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